ページを選択

Sample Page Gutenberg

This page is made with Gutenberg!

1【放射線MS導入の心構え】 放射線MSを導入するために、どのような考えを持って進めていけばよいの?
【放射線MS導入の心構え】 まず、取り組んでみましょう。何かが変わるはずです。研修や講習会の参加だけでなく、個別支援に申し込んで、導入のための支援を受けましょう。自施設にあった適切なアドバイスが得られます。また、活動を開始したら上層部、現場へ報告をしましょう。活動が実感でき、正しいか判断できる等、上層部にもPRできるので活動しやすくなります。
2【放射線MS導入のための3つのコツ】 放射線MSの導入には3つのコツがあります。 それは何でしょうか?
【放射線MS導入のための3つのコツ】 ① 現場主体でシステムを構築すること  はじめから完成度の高いシステムを構築しようと夢中になってしまうと、報告内容や周知方法は良いシステムなのに、実は使いにくいとか、抜けが多いということになりかねません。  線量計の値を確認・報告することや、健康診断の実施率、線量計の着用率をチェックするなどの準備・報告には多くの労力が割かれます。  効率的、合理的な体制の構築には、日々対応していただく現場の方々にとって、真に効率的であることが継続するコツとなります。 ② 木を見て森も見ること  マネジメントシステム自体は誰かに権限が集中しないように、組織全体として取り組むことが重要ですが、医療現場は様々な法令で規制されており、診療用放射線領域だけでも少なくとも5つはあります。  したがって、一つの側面からのみ検討してしまうと、他で問題を生じることがあったり、同じような管理業務が重複することになったりと、非効率的な管理業務に陥る恐れがあります。  そこで、誰かが縦断的かつ横断的にみることで、抜けなく網羅できることが期待できます。  この誰かを育成することは大変ですが、組織の更なる品質向上を生むことが期待できます。 ③ 誰のための管理なのか明らかにすること   法令遵守は大切ですが、そのためにはその法令がなぜ存在しているのかを理解することも重要です。  改正電離則は、放射線業務従事者の水晶体線量を把握し、放射線起因の白内障を防止するために改正されています。  それに付随して健康診断等の項目も見直されました。  したがって、労働者を守るための法改正です。  よく、  「医師が線量計を着けてくれない」  「線量限度を超えると業務制限がかかるから線量計を着用しない」 などの意見を耳にしますが、法令遵守の側面のみを優先してしまうとこのような意見が生まれてしまうのではと考えています。  ぜひ、何のための、誰のための法令なのか、このような意見が出た際には一緒に考えていただければと思います。
3【放射線MS導入の目的】 放射線MS導入の目的は、放射線から労働者の健康を守ることです。 そのために、どのような事に気をつければよいの?
【放射線MS導入の目的】 放射線MSは、放射線の被ばくから職場の労働者の健康を守るために導入するシステムです。そのためには、 ①線量限度、すなわち法令を守ること ②職員の無用な被ばくを避けて、被ばく線量を低減させること ③放射線業務従事者の個人被ばく線量計の装着率をあげること ④職員の放射線被ばくの意識づけ ⑤体制(システム)を継続して維持すること 等を実施します。
4【放射線MS導入時の優先事項】 放射線MSを導入するには、様々な作業が必要です。 まず、最初に着手することは何でしょうか。
【放射線MS導入時の優先事項】 1.基本方針、マニュアル類の作成 ①基本指針  ・線量限度の厳守  ・被ばくを可能な限り低減(1.0mSv/年以下)  ・関連法令の遵守(労安法、電離則、RI規制法、医療法、薬機法など) ②マニュアル類の作成  ・放射線MSの運用・管理  ・放射線MSのマニュアル、様式  ・診療放射線の安全利用のための指針2.放射線MS運用計画の立案  ・教育訓練(RI規制法、電離則など):年1回  ・電離則健康診断の実施:年2回  ・個人線量計装着率の調査:月1回  ・プロテクタの管理:年2回  ・漏洩線量の測定:年2回  ・放射線部会(分科会):年4回  ・放射線安全管理委員会(放射線防護+安全管理):年2回  ・労働安全衛生委員会:年2回
5【放射線MS導入の壁】 放射線MS導入時には多くの壁にぶつかりますが、すでに多くの事業場で導入が進んでいます。 どうやって壁を乗り越えてきたのでしょうか?
【放射線MS導入の壁】 壁その1:上層部への報告、他部署との情報共有の場がない。 打開策: 一例として、品質管理室、放射線防護委員会、放射線安全管理委員会等を設置する。その結果、以下のメリットが想定される。 ①個人線量計の配布、装着の調査結果を報告し、同会より注意喚起する。 ②プロテクタ、水晶体防護メガネの必要性、管理の結果を報告し、同会より注意喚起する。 ③委員会により、個人線量計、プロテクタ、水晶体防護メガネの調達を円滑に進めることができる。 壁その2:個人線量計の適切な配布、装着が行われていない。 打開策: ①配布状況、装着率を調査して委員会に報告し、同会をとおして注意喚起を行う。 ②各部屋に注意喚起のポスターを掲示して、装着率の向上を図る。 壁その3:プロテクタの健全性の確認、適切な配布、装着が行われていない。 打開策: ①定期的に、破損の有無などプロテクタの健全性を確認する。また、あわせて配布状況、装着率を調査して委員会に報告し、同会をとおして注意喚起、新規調達等を行う。 ②各部屋に注意喚起のポスターを掲示して、装着率の向上を図る。 壁その4:水晶体防護メガネの健全性の確認、適切な配布、装着が行われていない。 打開策: ①定期的に、水晶体防護メガネの必要性を確認する。また、あわせて配布状況、装着率を調査して委員会に報告し、同会をとおして注意喚起、新規調達等を行う。 ②各部屋に注意喚起のポスターを掲示して、装着率の向上を図る。 壁その5:教育訓練のアンケートにより、効果が十分ではないことが判明した。 ①個人線量計の装着の重要性、理解不足 ②放射線防護に関する認識や意識が低い ③個人線量計の装着率向上など、効果が認められない 打開策: ・電離放射線障害防止規則に則った教育訓練に加え,各種モダリティからの散乱線の測定値の提示,散乱線可視化アプリを活用して、教育訓練を行い、被ばく線量の低減を図る。 壁その6:担当者に業務が集中しすぎる 担当者の負荷が大きくなるため、放射線MSを運用するにも限界がある。 打開策: 特定の者に業務が集中することを排除するため、相互連携による問題解決を図る仕組みづくりを行う。一例として、放射線管理、医療画像情報精度管理、機器管理等の担当者が、放射線MSの運用に係る作業を担当者と連携して行う仕組みを作る。
6【放射線MSに必要な文書】 放射線MSでたくさんの文書を作らないといけないって聞いたけど。 そんなことはありません!文書はゼロから作る必要はありません!
【放射線MSに必要な文書】 ①研修会で配布された文書のひな型を使用したマニュアルの作成  研修会で配布された文書のひな型(テンプレート等と略称。)を、医療機関の実情にあわせてカスタマイズして作成している。医療機関ごとの事例では、特に問題は生じていない。 ②業務のマニュアル化と内容の確認について  業務ごとにマニュアルを作成し、定期的に内容の見直しを図っている。
7【放射線MSの内部監査】 放射線MSで内部監査をやるって聞いたけど、誰に監査員を頼んでいるの? 他事業場の事例は放射線MS特設サイトでチェック! https://www.rad-ms.mhlw.go.jp/home/faq/
【放射線MSの内部監査】 放射線MSでは、法令遵守が十分であることを評価するため、内部監査を実施します。 一例として、年1回、他部署の協力を得て内部監査を実施します。監査員は、産業医、衛生委員(総務課職員、薬剤師)、医療放射線安全委員(看護師)などが想定されます。
8【放射線管理組織の再編】 放射線MSの導入に合わせて、放射線管理の組織を見直す必要があった場合、どのようにしていけばよいの? 他事業場の事例は放射線MS特設サイトでチェック! https://www.rad-ms.mhlw.go.jp/home/faq/
【放射線管理組織の再編】 1.被ばく線量管理に関する見直し ①放射線管理について  放射線科内における放射線管理システムの見直しとその徹底を図った。 ②線量報告の体制システム構築  各個人への線量報告について、基本的には「所属長」「本人」にそのまま配布していたが、被ばく線量の管理として他部署との共有や協議により、線量報告のシステムを公式に整えることとした。 ③法令遵守  水晶体の線量限度が引き下げられたが、法令遵守の側面から、実施できていない等、間違った運用を改善した。 2.法令に規定された委員会等の設置 ・労働安全衛生法、電離放射線障害防止規則により、労働衛生委員会を設置。放射線業務従事者の被ばく管理を行った。 ・医療法、医療法施行規則、診療用放射線に係る安全管理により、医療放射線安全管理委員会を設置。患者さんの被ばくの管理を行った。 ・RI規制法、放射線治療装置、RIなどの管理により、放射線安全委員会を設置。放射線障害予防規程の管理を行った。 3.法令遵守のための見直し ・関連法令の責任者を明確にして、効果的な対応ができるようになった。 ・関連法令による複数の委員会の責任者を同一人物にし、委員会の連携を配慮し、副院長を委員会の統括管理者とした。 ・委員会毎に情報が混乱しないように、委員会の検討項目を明確にした。 4.既存委員会の活用 医療安全、労働安全の管理体制において、新たな委員会を新設せず、既存の安全衛生委員会、医療安全管理委員会を中心とした取組みを行った。 各委員会には、病院長、事務、各診療科の医師、看護師、診療放射線技師が所属していたため、施設全体で取り組む体制が構築しやすかった。 5.組織改編の一例 その1 ・従来は、執行組織委員会の下に医療安全対策委員会を置き、その下に放射線安全管理委員会と医療放射線安全管理委員会を置いていた。 ・組織改編では、執行組織委員会の下に労働安全衛生委員会と医療安全対策委員会を置いた。さらに、労働安全衛生委員会の下に放射線安全管理委員会を、医療安全対策委員会の下に医療放射線安全管理委員会をそれぞれ置いた。充実した管理を行うため、放射線安全管理委員会、医療放射線安全管理委員会を異なった委員会の下部組織としている。 ・委員会では、目標管理シートを用いて、院長事務長看護部長へ、進捗報告して4半期ごとのヒアリングにて直接問題点を訴えている。委員会組織は多職種で編成されているので、うまくいっていることも、うまくいっていないことも委員会委員と病院経営層に情報共有され、結果PDCAサイクルが回る仕組みとなっている。 5.組織改編の一例 その2 (1)放射線管理体制の構築のため、責任者、委員会等を設置。 ・看護協会主催の研修を受講して医療安全管理者を任命し、院内医療安全体制を構築して医療放射線安全管理委員会を設置した。 ・日本診療放射線技師会主催の研修を受講して、医療放射線安全管理責任者を任命した。 ・診療用放射線安全利用のための指針を作成した。 ・年1回、放射線安全管理のための研修を行い、記録を作成した。 ・患者さんへの放射線診療の正当化と最適化の説明を行った。 ・今まの照射録にCTDI・DLPの記録を追加し、被ばく線量を適正に記録・管理した。 ・CT検査では、検査プロトコルの見直しを行った。 ・放射線被ばく管理に関するマネジメントシステム導入支援事業に参加した。 (2)管理体制の定着と品質向上のため、体制に対する評価と改善を実施した。 ・年間目標を設定して、被ばく線量ゼロを目指した。 ・月間1.6mSvを超えるとインシデント報告を行い、その検証と再発防止対策を行うこととした。 ・リスクマネジメントを導入した。 ・これらの体制に対する評価と改善により、職員の低線量被ばくに対する意識が変わってきた。 5.組織改編の一例 その3 (1)放射線安全委員会事務局の報告 個人線量計(ガラスバッジ)の配布・回収を行い、同委員会で個人線量を報告する。 また、被ばく線量の確認(毎月)を行う。 当委員会で定めた基準値:実効線量0.8mSv、水晶体等価線量0.8mSvを超えた職員をピックアップし、一覧表にまとめ、放射線安全委員会にて報告する。 (2)放射線安全委員会副委員長が、労働安全衛生委員会で報告 労働安全衛生委員会は、病院長、産業医、経営部門などで構成されているため、線量報告が病院長や経営側に伝達される。 ※労働安全衛生委員会(月1回開催)  委員長(病院長)副委員長(産業医)事務局(医務室)  労働者側委員、事業者側委員
9【リスクアセスメントについて】 放射線MSでリスクアセスメントがあるって聞いたけど、必要なの? なぜ必要か、どうやるのかについては放射線MS特設サイトでチェック! https://www.rad-ms.mhlw.go.jp/home/faq/
【リスクアセスメントについて】 1.リスクアセスメントの視点  放射線に被ばくする労働者のリスクを評価して、防護衣や線量計の装着などのリスク低減策(被ばく線量低減策)を検討して実施する。 リスク:重篤度×可能性  危険性・有害性によって生じる恐れのあるケガや疾病の重篤度と発生する可能性の度合い。 放射線被ばくにおける重篤度と可能性  医療放射線被ばくは、設備、手技、術者、頻度等の影響を受ける以下の4つの要素に分解し、検討する。  A:放射線照射機器の側面(遮蔽)  B:診療行為の側面(距離)  C:職員(手技時間や手技数)の側面(時間)  D:昨年の被ばく実績(実績) 2.放射線被ばくにおけるリスク(重篤度と可能性)の検討(一例) A.放射線照射機器のリスクアセスメント:遮蔽の視点) ・<リスク1>  照射線量が少ない装置または遮蔽がされている放射線照射機器  ①放射線治療装置  ②X線装置、移動型X線装置  ③乳房用X線装置、骨密度装置 ・<リスク2>  照射線量は多いが遮蔽板、防護用カーテンで遮蔽されている放射線機器  ①核医学装置  ②血管造影装置  ③設置型透視装置(防護カーテンあり) ・<リスク3>  照射線量が多く、遮蔽がされていない放射線機器  ①移動型透視装置(外科用イメージ)  ②設置型透視装置(防護カーテンなし) ・<リスク4>  照射線量が多く、遮蔽がされていない放射線照射機器  ①CT装置B.診療行為のリスクアセスメント:距離の視点 ・<リスク1>  距離が遠い診療行為(200cm以上、管理区域外からの操作)  ①IVR検査に立ち会う、放射線治療の技師  ②Ope室、救急室、放射線治療のNrs.  ③照射時は主に管理区域外に退去する医師 ・<リスク2>  距離が近い診療行為(100~200cm)  ①IVR検査に立ち会うNrs. ・<リスク3>  距離がやや近い診療行為(50~100cm)  ①IVR検査に立ち会う臨床工学技士  ②嚥下造影に立ち会うST  ③ポータブル撮影を行う放射線技師 ・<リスク4>  距離が非常に近い診療行為(50cm未満)  ①外科用イメージにて手技を行う医師  ②IVR装置にて手技を行う医師  ③嚥下造影に立ち会う医師  ④注腸造影を行う放射線技師C.職員のリスクアセスメント:時間の視点 ・<リスク1>  検査数または照射時間の少ない検査に立ち会う術者/操作者/介助者  ①一般撮影、ポータブル撮影を行う放射線技師  ②Ope室、救急室のNrs.  ③CT室の技師、Nrs. ・<リスク2>  検査数は少ないが、照射時間が比較的長い検査に立ち会う術者/操作者/介助者  ①外科用イメージにて手技を行う医師  ②嚥下造影に立ち会う医師、ST  ③IVR検査に立ち会う技師、Nrs.  ④放射線治療の技師、Nrs. ・<リスク3>  照射時間の比較的長い検査に立ち会う術者  ①IVR(心臓以外)、診断カテ検査を行う医師  ②注腸造影を行う放射線技師 ・<リスク4>  照射時間の長い検査に数多く立ち会う術者  ①心臓カテーテル検査を行う臨床工学技士、医師D.昨年の個人被ばく実績:実績の視点 ・リスク0(0点)  一昨年度、昨年度の被ばく実績注意喚起報告がなかった ・リスク1(1点)  一昨年度、昨年度の被ばく実績注意喚起報告がなかった3.総合リスクの評価 ・点数化して、総合リスクを評価  <リスク点数>総合リスク=A+B+C+D   A:放射線照射機器、B:診療内容、C:職員、   D:昨年の被ばく実績  リスクⅠ(低リスク):4点  リスクⅡ(中リスク):5ー10点  リスクⅢ(高リスク):11点以上 総合リスクに応じて、リスク低減対策を検討、実行し、改善状況を確認する4.総合リスクに応じたリスク低減対策  リスクⅠ:防護衣をつけない(線量計1個)   防護衣はエプロンタイプ   例1、たまにしか従事しない   例2、核医学、小線源治療等(防護衣の効果が少ないので、通常、      防護衣を着用しない)   但し、もし防護具を着用する場合は「防護衣の外側」につける  リスクⅡ:防護衣をつける   (線量計2個:防護衣の外と内)   防護衣はエプロンタイプもしくはコートタイプ  リスクⅢ:防護衣と防護眼鏡をつける   (線量計3個:防護衣の外と内と眼の近傍)   防護衣はコートタイプ
10【ポケット線量計の活用】 放射線被ばく管理にポケット線量計を使う場合があるって聞いたけど、どのように活用しているの? 他事業場の活用事例については放射線MS特設サイトでチェック! https://www.rad-ms.mhlw.go.jp/home/faq/
【ポケット線量計の活用】 ①ポケット線量計の活用  手技ごとに医師の被ばく線量をポケット電子線量計でリアルタイム計測し頚部被ばくの状況を医師と診療放射線技師で共有している。 ②医師の被ばく線量の情報共有  手技ごとに医師の被ばく線量をポケット電子線量計でリアルタイムに計測し頚部被ばくの状況を医師と診療放射線技師で被ばく状況を共有している。1例ごとに被ばく線量を確認できるので医師の被ばく意識が高くなる効果がある。③術者(医師)の頚部被ばく線量は、高い順に以下のとおり。  PMI(ペースメーカー植え込み術) ≒EVT(末梢血管治療)>PCI(経皮的冠動脈インターベンション) >CAG(冠動脈造影検査)>ABL(カテーテルアブレーション) >PVI(アブレーション)④第一術者について、手技ごとのポケット電子線量計の頚部線量は、線量の高い順に以下のとおり。  血栓回収>腫瘍>AVM(脳動静脈奇形) >CAS(頸動脈ステント留置術)>動脈瘤>AG(アンギオ検査)
11【被ばく線量低減のための取り組み】 被ばく線量低減が重要なのはわかるけど、具体的に何をすればよいの? 他事業場の事例は放射線MS特設サイトでチェック! https://www.rad-ms.mhlw.go.jp/home/faq/
【被ばく線量低減のための取り組み】 1.A病院での事例 ①これまでに実施した取り組み  放射線MS導入支援事業の参加により,再度、線量計の装着率や未装着の診療科の把握を行い、研修のテキストを活用し、電離則改正と線量計の装着、防護板の正しい使用法について診療科のカンファレンスにて周知した。  啓発活動として、カテ室ロッカー、TV室ルミネスバッジ置き場へ啓発ポスターを掲示した。  防護デバイスを運用した。カテ室、TV室での防護眼鏡装着、ERCPの簾型防護、カテ室の管球側プロテクタ等を運用している。  その他、その他リスク低減処置として、オペ室の外科用イメージの散乱線分布の計測、防護眼鏡の効果についてドクターと協力して研究、発表を行った。  循環器のカテ室に、自作の防護シールドを装着した散乱線除去防止対策を行い、CT室には、防護眼鏡を置いて、室内での作業ではすぐに装着できるように改善を行った。  線量が多かった医師Aの左側と医師Bの右側の防護眼鏡の着用による線量低減率は、それぞれ70%、63%だった。 ②今後の予定 ・据置型デジタル式循環器用 X 線透視診断装置更新による被ばく低減と術者被ばくの低減を目的とした放射線防護シールドの購入 ・オペ室の外科用イメージのフラットパネルディテク(FPD)装置の導入(現状装置はI.I →FPDによる大幅な被ばく低減が期待) ・救急室CT装置の天吊り式防護板の装着 ・防護眼鏡の持続装着(曇り止めシール)啓蒙活動 ・放射線防護掛布による整形外科手術時の術者防護対策の実施 ・被ばく管理システムによる線量分析からの効果判定 ・線量計装着率を上げていく啓発活動の継続 ・“放射線業務従事者に対する教育訓練” の参加率が医師6割程度に対する対策(e-ラーニング資料の改訂など) 2.B病院での事例 ・中央放射線部の放射線管理委員会に個人線量計の装着を促すポスターの作成を依頼し、各検査室に掲示。  □ガラスバッジ着け忘れていませんか?   ガラスバッジは正しい位置に着けましょう!   ☆プロテクターの内側   ☆男性は胸部、女性は腹部   ☆頭頚部用バッジはネック用プロテクタに直接着けましょう ・泌尿器専用の透視室に防護板を設置。 ・防護眼鏡を購入。・心カテ担当技師が循環器内科の医師に向けての防護板の適切な使用方法をカンファレンスにて講義。 ・スライドで説明することで、より理解が深まったと好評。被ばく低減への意識が高まった。・被ばくリスクが高いスタッフに対して、より正確な水晶体の被ばく線量を計測するためにDOSIRIS(水晶体専用個人線量計)を使用開始。 ・DOSIRIS使用開始後、被ばくに対する意識の向上により、水晶体の等価線量は減少傾向にある。 ※頭頚部用の個人線量計は等価線量を過大評価する傾向もあるめ、DOSIRIS使用で正確な等価線量が計測された影響も考えられる。 ・なお、被ばく線量が多い場合は、防護板の使用方法を確認やDOSIRISの装着の確認などを行っている。・個人線量計の装着率調査を実施。  各検査室の放射線技師に調査を依頼し、各部屋に出入りしたスタッフの個人線量計装着率を調査。 ・初回の調査では装着率47.3%であり、啓蒙活動、ポスター掲示などを行った結果、半年後に再調査し、装着率80.2%に向上した。  調査に漏れている部署やスタッフもいるので、定期的に実施。
12【コンプライアンスの管理】 コンプライアンスって難しいけど、放射線管理ではどのように適用しているの?
【コンプライアンスの管理】 1.個人線量計(未装着、装着部位の間違いなど) ①防護リスクマネジメント評価  四半期ごとに1回見直しをして、従事者の線量計の装着個数を明確にして装着させている。 ②管理区域一時立入り者への対応  一時立入り者へは、基本的にポケット線量計を利用している。1cm線量当量で十分な管理とまではいえないが、換算係数を利用して水晶体の線量を推定している。また、1個しかないので、過小評価よりは過大評価を採用して、装着部位は頚部への装着としている。  予備線量計を常備していますので、必要があれば対応できる体制を整えている。  法令に定められた項目について立入り記録を作成し、保存する。  ・立入り年月日・時刻、退出した年月日・時刻  ・管理区域のうち立入った場所  ・管理区域に立入った目的および作業内容  ・同行者がいた場合、当該者の氏名、所属及び職務内容 ③その他  担当技師が装着等をチェックする。  掲示物の作成、掲示。  入域前の口頭での注意喚起。 2.防護具(防護具の未装着、防護不備など)  首のプロテクターや防護眼鏡をつけないなど、線量計と同様にチェックおよび記録を行う。  記録はExcelシートに残し、毎月の防護委員会にて評価を行う。  記録は衛生委員会もしくは医療放射線安全委員会にて報告し、必要があれば、衛生委員会を通して「業務管理」の面からその部署へ推定される線量と防護不足により通達するといった方式をとっている。 3.知識(放射線に関する知識に乏しい、防護方法の理解不足など)  医師はともかく、看護師などは知識が浅い点も見受けられるため、掲示物や、入室前、撮影前などに可能であれば離れていただくことなど、口頭でも注意喚起を行う。  また、線量計を配布する際は、当院の放射線科ルールとして、簡易研修を義務化とした。この方式の採用から、看護師からは、放射線のことはわからないから、と好評をいただいている。  このほか、定期勉強会や入室中の注意喚起を行っている。
13【災害時、危険時の対応】 放射線管理で危険時と言われてもピンとこないんだけど、どんな危険を想定すればよいの?
【災害時、危険時の対応】  地震又は火災その他の災害、放射性同位元素の漏洩又は飛散、内部被ばくの発生、管理区域の火災、遮蔽の喪失、外部被ばくの発生、事故、紛失、盗難などについて、それに対応する手順、組織、担当者、機材等を事前に準備して備えておく必要があります。  これら危機管理のシナリオは想定事象ごとに検討して、放射線MSの文書として委員会等によってオーソライズして、関係各所の配布する必要があります。  また、対応の手順を組織内に浸透させるため、対応訓練を行う事もあります。想定事象の検討をこれまで行った事のない医療機関については、まず、被ばく線量が過大になった事象から始めてはいかがでしょうか。  一例として、被ばく線量が月間1.6mSvを超えると、インシデント報告・インシデント検証と再発防止の対策を行うとする医療機関があります。
14【放射線MS導入の成果】 放射線MS導入でどのようなメリットがあるの? 他事業場の事例は放射線MS特設サイトでチェック! https://www.rad-ms.mhlw.go.jp/home/faq/
【放射線MS導入の成果】 1.A病院 ・医師や医療安全管理委員会のすすめにより、放射線MS導入支援事業に参加した。 ・研修及び支援により、職員や患者の医療被曝低減に向けて方針や計画が立った。 ・今回の支援を通じて、経営者の意識の変化として、患者だけではなく、改めて職員の医療被曝低減の必要性を感じた。 ・放射線を取扱う職員や現場での意識の変化として、放射線被ばく低減の取り組みの意識変化と正しく放射線被ばくの知識を得ることで放射線に対する不安や怖さが少なくなった。(看護職員からのコメント) ・現場の改善例として、被ばく低減のために看護師職員がサポートに来てくれることが増えた。 2.B病院  現在は、毎月開催される衛生委員会でも放射線業務従事者被ばくの状況報告をすることにより、現状把握と迅速な対応が周知できるようになり、異常値についての確認や注意・指導も速やかに行えるようになった。  また、放射線安全管理研修に対しても、病院全体として衛生委員会、医療安全対策委員会からの支援があり、100%の受講率を達成した。  受講に際してのアンケートでは、 「放射線防護の必要性と方法が知れて良かった」 「診療放射線技師さんの被ばく防護の苦労が分かった」 等 うれしい意見をいただいた。 3.C病院 ・組織体制・報告体制に関してはMS導入前後で変化なし。 ・管理体制については、  ・リスクアセスメントを見直し、頭頚部用の個人線量計を配布する対象スタッフを拡大。  ・個人線量計の装着率調査を行う。  ・一年を通して被ばく線量の多いスタッフに関しては、線量の追跡を行う。  ・前勤務先より被ばく線量の証明書を取得。  ・被ばく線量に関しては大きな被ばくがあった場合だけ報告するのではなく、細かくデータをまとめ報告し、早めの介入を行う。 ※リスクアセスメントという概念や線量管理に対する取り組み方への意識が高まった。上層部へも放射線被ばく管理が重要になってくるとアピールすることが出来た。 4.D病院 ・被ばく管理上の改善を要する事項について、以下の改善を実施した。  ・経営トップ未介入→四半期ごとの進捗報告  ・組織上の位置づけの誤認識→委員会組織の改編および体制変更  ・教育訓練の拡大解釈誤認識→教育訓練(医療被ばくと職業被ばく)の分離  ・法令遵守を確認する仕組みがない→複数で確認する仕組み整備  ・個人の被ばく線量のリスクアセスメント不備    →申請書改訂およびリスクアセスメントの実施  ・リスク低減に対する残留リスクの存在→診療放射線技師の十分な配置 5.E病院 ・良かった点  ・放射線管理業務を見える化することが出来た  ・放射線防護プロテクタや防護眼鏡の購入・更新が要望しやすくなった  ・部署内の他の管理業務においてもPDCAの意識が芽生えてきた  ・放射線管理関連の情報を経営層及び病院内に周知する機会が増えた  ・個人線量計の正しい位置への装着率の向上が計れた  ・放射線業務従事者の被ばく防護に対する認識が向上した  ・放射線管理業務に診療放射線技師以外の職種(医師、看護師、事務   職員)や若手の職員を取り込みやすくなった ・良くない点  ・管理に関する負担と時間外業務が増加した 6.F病院 ・院長のトップダウンによりスムーズな導入ができ、病院の方針として活動開始した。 ・放射線MSの導入により,病院内の放射線防護に関する現状を把握し,問題点に関し対策立案・実行・改善・効果判定(PDCA)が実現された。 ・病院内の組織体制構築,放射線防護の知識・技術の底上げ, 医療被ばく及び医療従事者の被ばく低減が実現された。・放射線MSの導入がスムーズに実行できた理由   ① トップダウンでの運用開始   ② 品質管理室や各種委員会を設置しPDCAサイクルを実行 ・導入による効果   病院の価値の向上(質や技術の向上、離職率低下など) ・当施設ではこのような運用形態としたが,施設の規模や組織体制,設置されているモダリティ,医療従事者数により臨機応変に対応すべきと考える.・放射線MSは  ①医療従事者の被ばく低減のための有効な管理システム  ②放射線MS未導入施設は導入すべきシステム  ③どのようなスタイルであれまずは取り組むべき である。
15【放射線MS導入支援事業を利用した成果】 放射線MS導入支援事業で研修会や報告会をやっているみたいだけど、実際に参加した人の意見が聞きたい。
【放射線MS導入支援事業を利用した成果】 ①研修会の受講について ・受講後は、毎回技師長・上層部に参加報告書を提出したところ、上層部が放射線MSは必要と判断し、トップダウンで放射線MSを導入することとなった。 ・トップダウンによる効果で放射線安全管理責任者の任命や放射線防護(安全管理)委員会などの設置を検討 ・リスクアセスメントの実施により不均等被ばく対応フイルムバッジ導入の検討が実施され承認 ・基本となる資料を提供いただいたので資料作成が容易 ・放射線安全管理責任者の任命や放射安全管理委員会などの設置 ・基本となる資料を提供いただいたので資料作成が容易 ・放射線防護のための申請が通りやすくなった ・職員の被ばく防護に対する認識が向上②報告会への参加 ・様々な規模の施設の事例報告があり、当施設のような中小規模の施設の報告もあったので、参考となった。 ・自施設で悩んでいる(困っている)ような事例も聞くことができた。 ・自施設でも取り組める希望を持つことができた。③個別支援への参加 ・トップマネジメントの理解が得られたこと。 ・技師長にも出席いただき状況を把握したこと。 ・資料は作成したが自施設にあったものに改良すべき。 ・資料ありきではなく運用から進めてもよいこと。 ・技師長や診療放射線技師にも出席して状況を把握して頂いた。 ・MS文書等の資料は作成したが自施設にあったものに改良する必要がある。また、ISOや病院機能評価などとの整合性を保つ必要がある。 ・MS文書等の資料ありきではなく、運用から進めても良いことが分かった。
16【プロテクタの管理】 経年劣化したプロテクタの処分の目安はあるの? また、どのような保存方法がよいの?
【プロテクタの管理】  プロテクタは、何年使用しても遮蔽率はそんなに変わらない。古いからダメということではなく、大事なのは破損や穴が開いていないかどうかというところである。  昔のものは固めなものが多く破損せず丈夫だが、最近のものは、軽くて柔らかいものがあり、そのタイプだと、折り目が入るとそこから亀裂が入って鉛が落ちたりするので、手で触って硬さが異なる場所があったりした場合は、交換することを考えてもよいと思われる。 心配であれば、透視を使用して鉛を確認することもできるが、それをやっている際に被ばくしてしまうので、それはお勧めしない。  レントゲン装置(胸部)があれば、ハンガーでかけて、胸や腹のメインのところを撮ってみて遮蔽されているのかを確認するのは、良いかもしれない。古いからダメということではなく、中の鉛等遮へい体を確認して使用する。  また、保存方法だが、椅子にかけたり、丁寧に折りたたんだりすると折り目が付いてしまうので、あまりお勧めはしない。一番良いのは、ハンガーに吊るした方が長持ちすると言われている。
17【出張医師等の被ばく管理】  他の施設から来られる出張医師等の被ばく管理はどのようにすればよいの?
【出張医師等の被ばく管理】  結論から言うと、線量計は、作業場毎に用意した方が良い。高い線量が出た場合、原因の分析ができなくなるため、他の施設で勤務している医師が、そこの線量計を持参して、違う施設に行くことは避けた方が良い。  この問題は、どの地域でも同じようなことがあり、完全な答えがない。  従事者の一元管理をどうするかということについては、現場単位で工夫をしながらやっていかなければならないが、主に以下の3つの方法が考えられる。 ①各施設で測定した結果を記した報告書等を都度渡し、主となる施設で合算して管理 ②主となる施設の線量結果を自分たちの施設に持参してもらい、合算して管理 ③ドクター自身で合算して管理  3つ目は、よほどのことがない限り、上手くいかないだろうと思われる。やはり、主となる施設で集計した方がいいのではないかという結論である。できることとしたら、自施設で線量計を用意し、都度、線量結果の情報をお渡しする、もしくは、月毎の合算した線量結果の報告書をお渡しする、という形にした上で、どう扱うかというのは、その人にお任せしてしまうというのが形的には、一番きれいな形だと思われる。  あとは、その人が勤務している施設の放射線管理の責任者と連絡をとってもらい、線量結果の報告書はお渡ししているので、そちらで合算してくださいという形になるのかと思う。
18【清掃で管理区域に出入りする者の管理】  清掃など、管理区域内で放射線業務を行わない者の管理はどのようにすればよいの?
【清掃で管理区域に出入りする者の管理】  清掃など、管理区域内で放射線業務を行わない者については「管理区域に一時的に立ち入る者」に該当するので、放射線業務従事者と同等の被ばく管理は不要。  「労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について(基発第253号、平成13年3月30日)9 第8条関係」
19【管理区域の一時立ち入り者の線量計の着用】  病棟の看護師が撮影機のある管理区域に入る場合、法律上は一時立ち入り者となりますが、バッジ(線量計)の装着は必要でしょうか。
【管理区域の一時立ち入り者の線量計の着用】  法令の注釈により、管理区域に一時的に立ち入る労働者について、一般公衆の線量限度である年間1mSvを超えないことが証明できるのであれば、バッジ(線量計)をつける必要がないと規定されています。  「労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について(基発第253号、平成13年3月30日)9 第8条関係(2)」   管理区域内で患者さんを抑える際には、プロテクタをしっかり着用する、直接線の中に入らない、たまにしか管理区域に入室しないのであれば、1mSvは超えません。  診療放射線技師が、鉛のプロテクタを着用して、管理区域内に入り、何回か患者さん抑えたとしても1mSvは超えません。0.1μSv程度の被ばく線量なので、しっかりとプロテクタを着用して、被ばく線量も1mSvを超えないことのエビデンスがあれば、個人線量計の着用は不要です。